【本】16064 17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! by 吉村 仁

投稿者: | 2016-06-24

幼虫として長期間を土の中で過ごすセミがいます。
13年、17年という周期で大発生を繰り返すため、筆者は素数ゼミと名づけています。

なぜ、素数なのか。この答えがわかりやすく説明されています。

もともとはこの類のセミは多くの種類いたようです。
しかし、素数でない周期を持つセミは、最小公倍数が短期間になるセミがいます。
例えば、15年セミと18年セミは90年ごとに同時期に大発生します。すると、これらのセミはよく似ているため、異種間で交配が起きてしまいます。異種間で交配が起きたセミの次の世代は、15年、18年という周期ではなく、16年、17年など少しずれたセミが生まれやすくなります。
これらのセミは、成虫になって土から出てきても、そのタイミングでは大発生が起きていないため、相手を見つけることができません。
その結果、異種交配種は繁殖に非効率的になってしまいます。このような「無駄」が90年ごとに生じるため、これらの種は長い期間を経て絶滅に向かってしまい、結局素数に収束していったのです。

その他にも、生物の進化に関する話がたくさん書いてあります。
例えば、形質解放です。
島国など、天敵が少なく、狭いためにパートナーを見つけやすい場所があります。そのような”easyな環境”住む動物は、一般的に地味になっていきます。一方で、天敵が多く、パートナー獲得のための競争が激しい(”choosyな環境”)と、奇抜な色、大型/小型化など大きな個体差が生じます。
安全な環境では、「秩序を破壊するコスト」を払わない一方で、競争に勝ち抜くためには「秩序を破壊するコスト」を払うという必要があるということです。

当然、両者が混ざると後者が勝つでしょう。
医療界はこれまでeasyな環境であったため、医師は秩序を破壊せず、どんどん地味になっていきました。しかし今後は、他のchoosyな分野からの医療への進出が予想されます。
生き残るためには形質解放が必要ではないでしょうか。

生殖行動に関する性差の話も面白いです。オスのセミはメスの出すカチカチという音に似た音を出すものであれば、たとえスイッチであっても交尾を試みるのに対し、メスのセミは少しでも違う種であれば、交尾を断ります。
これは、オスは相手を間違えても再度メスを見つければいいのに対して、メスは間違った相手と交尾してしまった場合、セミの場合は交尾後フタをされてしまうため、チャンスを失ってしまうということが原因です。

また、モテるオスは子育てに協力的、モテないオスは見向きもしない、というのも種を超えた真理でしょう。

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