【本】『目の見えない人は世界をどう見ているのか 』伊藤亜紗 #32

投稿者: | 2016-04-20

”決定的なのは、やはり「視点がないこと」です。視点に縛られないからこそ自分の立っている位置を離れて土地を俯瞰することができたり、月を実際にそうであるとおりに球形の天体として思い浮かべたり、表/裏の区別なく太陽の塔の三つの顔をすべて等価に「見る」ことができたわけです。”
”見えない世界には死角がありません。つまり、自分の体が向いている前方と同じように、背中方向にいる後ろの選手の動きもよく分かるのです。だからこそ、後ろへのヒールパスが増えたりする。”
”「見えているもの」とは、文字どおり目の前にある、たとえば絵画の大きさだとか、色だとか、モチーフなど。ひとことでいえば「客観的な情報」です。「見えていないもの」とは、その人にしか分からない、思ったこと、印象、思い出した経験など。つまり「主観的な意味」です。”
”客観的で抽象的な「情報」に対して、具体的な文脈に埋め込まれ、その人ならではの視点を含んだ「意味」。意味には、見えないことでおのずと生まれてくる意味と、見えない人が意図的に作り出す意味があります。”

触覚や聴覚、嗅覚などほかの感覚器官を利用して見ている世界は、眼が見える私達の世界からただ映像が欠けているのではなく、全く違う捉えられ方がされている。見えていないからこその世界があって、「かわいそう」ではなくもっとお互いの世界に好奇心を持つ関係が良いのではないかという考え方は、新鮮で納得がいく。

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